8月に入って仏壇にお線香をあげていると、菩提寺から「今年もお盆のお参りに伺います」と電話がかかってきた。毎年の恒例行事とはいえ、今年は家族の予定が合わない、正直なところお布施の負担も重い、と感じている方は少なくありません。
長年お世話になっているお寺だからこそ、失礼なく断りたいものです。この記事では、お布施の相場などを確認したうえで、電話・LINE・メール・手紙・対面のシーン別に、そのまま使える例文6つを紹介します。
お盆にお坊さんが家に来る理由とお布施の相場
お盆にお坊さんが家に来るのは、棚経(たなぎょう)と呼ばれる法要のためです。菩提寺の僧侶が自宅の仏壇の前で読経し、ご先祖様の冥福を祈ります。「お盆参り」と呼ぶお寺もあります。
お盆の時期は地域によって異なる
全国的に多いのは、新暦8月13日〜16日の「月遅れの盆」に合わせた訪問です。東京や横浜の一部など新暦7月13日〜16日に行う地域もあれば、沖縄や奄美のように旧暦の7月13日〜15日(年によって新暦の8月下旬〜9月)に行う地域もあります。
お寺は8月の初旬から中旬にかけて檀家を順に回るため、自分の家に来る時期を知っておくと、断りの連絡を入れる時期も逆算しやすくなります。
棚経にかかる時間とお布施の目安
棚経そのものは、お経をあげる時間が15分〜30分ほどで、お茶を出す時間を含めても1時間かからないことが多いです。お布施は法要のあとにお渡しするのが一般的で、相場は5,000円〜1万円程度、故人が亡くなって初めて迎える新盆(初盆)は1万円〜3万円程度が目安とされます。
渡し方は、袱紗に包んで持参し、読経を終えた僧侶に、小さなお盆に乗せて「お布施でございます。よろしくお願いいたします」と添えるのが丁寧です。金額は地域やお寺で差があるため、不安なら同じ檀家の親戚に聞いておくと安心です。
お金の包み方や辞退のマナーは、香典・弔電を辞退する際の断り方と重なる部分もあります。金銭が絡む連絡は言い回しに迷いやすいので、あわせて読んでおくと参考になります。
棚経のほかに頼まれることもある
お盆の時期には、棚経のほか、お墓参りや、寺院で行う施餓鬼(せがき)法要・お盆の合同法要に声がかかることもあります。新盆の家では、白い提灯を飾り、親族を招いて新盆法要を営む場合もあります。遠方や日程の問題で、すべてに応じられない家庭も多いでしょう。
お坊さんの来訪を断りたくなる主な理由
断りたい理由は家庭によってさまざまです。経済的な負担、当日家を空けられない時間的な事情、仕事の都合、作法への不安、転居や海外在住による物理的な問題などが代表的です。
- お布施の負担が大きい
- お盆休みに旅行や帰省の予定がある
- 仕事でどうしても家を空けられない
- 作法やマナーに自信がなく、気を遣ってしまう
- 実家が遠方・海外で対応できない
なかでも多いのは、お布施の負担と、お盆休みの予定の2つです。共働きで休みが限られる家庭では、僧侶を迎える1日の拘束が重く感じられます。
断るときにやってはいけないNG対応
いちばん避けたいのは、訪問の前日や当日になって急にキャンセルすることです。お坊さんは他の檀家の予定と合わせて回る順番を組んでいるため、直前の連絡は迷惑になり、その後の関係にも響きます。返事の放置も同じで、お寺は行くべきか判断できず、何度も確認の連絡をすることになります。
- 訪問当日や前日になって急にキャンセルする
- 電話やLINEに返信せず放置する
- 理由も告げずに一方的に断る
- これまでのお礼を伝えないまま辞退する
断る前に整理しておきたいこと
「断ったら失礼にあたるのでは」と、言い出せずに数年が過ぎてしまう方は多いものです。ただ、来訪の依頼もお布施も、本来は家庭の事情に応じて相談してよいものです。
「今年だけ」なのか「今後も」なのかを先に決める
連絡の前に決めておきたいのは、今年だけの事情なのか、来年以降も棚経を見直したいのかという点です。ここが曖昧なまま「都合がつかなくて」とだけ伝えると、翌年もお寺から同じ確認の電話が来て、そのたびに断り直すことになります。
今年だけ家を空けるなら「今年は」を強調し、高齢の親の体調で今後も難しいなら、来年以降も含めて相談する形になります。連絡の前に、次の点を家族で確認しておきましょう。
- 誰が施主として連絡するか
- 今年限りにするか、来年以降も見直すかの方針
- お布施の代わりに、別の形で感謝を伝えるか
- 親や兄弟に事前に事情を共有できているか
断る以外の選択肢も知っておく
お寺によっては、事前に相談すれば、訪問の日時をお盆当日から少しずらしてもらえたり、読経を短くしてもらえたりします。近年は、オンラインでの読経に対応する寺院もあります。迷うときは、お寺の世話役(総代)や親戚に、他の檀家がどうしているか聞いてみるのも一つの手です。
角が立たない上手な断り方【シーン別例文】
断るときは「早めに連絡する」「理由は短く伝える」「感謝を添える」の3点を押さえると、角が立ちにくくなります。ここでは電話・LINE/メール・手紙・対面、そして家族への伝え方まで、相手と状況を変えて6つの例文を用意しました。
電話で断る場合
電話は、お寺から連絡が来たときにそのまま返せる、最も一般的な手段です。かけるなら、朝夕の勤行の時間や食事時を避け、日中の落ち着いた時間帯を選びましょう。
長年の付き合いがある菩提寺の住職に、今年だけ都合がつかないと伝える場合です。
💬 例文
「お世話になっております。〇〇家の〇〇です。今年のお盆のお参りのご連絡をいただき、ありがとうございます。誠に恐縮ですが、今年は家庭の事情で、お参りをご遠慮させていただきたく存じます。来年はまた改めてお願いしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。」
電話は声の調子が伝わるため、早口にならず、相手の返事を待つ間を大切にします。引き止められたときの流れは次のとおりです。
🗣️相手「今年もお盆のお参りにお伺いしてよろしいでしょうか。」
🙂自分「お心遣いをありがとうございます。今年は都合がつかず、お参りを見送らせていただければと思っております。」
🗣️相手「そうですか。お忙しいのでしたら、時間を短くすることもできますよ。」
🙂自分「ご配慮に感謝いたします。ただ、今年は家を空ける日が続くものですから、また来年ご相談させてください。」
引き止められても、「今年は」「来年また」と、今回限りの事情であることを穏やかに繰り返せば問題ありません。理由を細かく話しすぎないのがコツです。
次は、お寺の奥様(寺庭婦人)など、日程の調整を担当している方に、日をずらしたいと相談する場合です。断るというより、調整のお願いに近い形にしています。
💬 例文
「〇〇家の〇〇です。お盆のお参りの件でお電話いたしました。あいにく、13日から16日までは家族で出かける予定があり、その期間に住職様をお迎えするのが難しい状況です。もしご都合がよろしければ、20日以降で日程を調整していただくことは可能でしょうか。ご無理でしたら、今年はお休みさせていただきます。」
LINE・メールで断る場合
近年は、LINEやメールで檀家とやりとりをするお寺も増えています。文字だけの連絡は冷たく見えやすいので、書き出しに感謝を入れ、絵文字は控えるのが無難です。
普段から副住職や寺務所の担当の方とLINEで連絡を取り合っていて、気軽に返せる間柄の場合です。
💬 例文
「ご連絡ありがとうございます。〇〇です。今年のお盆ですが、家族の予定が合わず、お参りを控えさせていただきたく思います。直前のお返事にならないよう、早めにご連絡しました。またご都合を伺って、改めてお願いできればと思います。」
手紙で断る場合
ご高齢の住職や、代々のお付き合いがあるお寺には、電話やLINEより手紙のほうが丁寧に伝わります。来年以降も棚経を見直したいときは、書面のほうが意向を正確に残せます。
手紙は届くまでに数日かかるため、お盆の2週間ほど前までに投函するのが目安です。時候の挨拶を添え、便箋に手書きで書くと、気持ちがより伝わります。
高齢の住職に対して、経済的な事情から今後の辞退を丁寧に伝える場合です。
💬 例文
「拝啓 盛夏の候、ご住職様におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。平素より格別のご厚情を賜り、心より御礼申し上げます。さて、毎年お盆のお参りをいただいておりますが、私どもの事情により、今後のお参りをご辞退申し上げたく、お手紙にてご連絡いたしました。これまでの長きにわたるご縁に深く感謝しております。今後もお墓参りの折にはご挨拶に伺いたく存じます。まずは書中にて失礼いたします。敬具」
対面で断る場合
お寺へ出向いたときや、法事などで住職と顔を合わせる機会に、直接伝える場合です。断りの言葉のあとに沈黙が続いても、お礼を一言添えて締めれば十分です。
お寺の総代や世話役の方に、お布施の負担が理由で簡略化を相談する場合の言い方です。
💬 例文
「本日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。実は今年、家計の事情もあり、例年どおりのお布施をご用意するのが難しくなりました。心苦しいのですが、今年のお参りは辞退させていただき、お墓参りだけで手を合わせようと考えております。ご先祖様への感謝は、家族で大切にしてまいります。」
お盆はお坊さんの訪問だけでなく、お盆の帰省や親戚の集まりの断り方で悩む時期でもあります。あわせて対応を考えておくと、当日の予定が整理しやすくなります。
家族・親族に伝えるとき
お寺への連絡より難しいのが、実家で棚経を続けてきた親に、自分の家では見直したいと伝えることです。
頭ごなしに「もうやめたい」と言うより、負担の具体的な理由と、代わりに何をするかをセットで伝えると受け入れてもらいやすくなります。実家の母親に、お布施の負担を理由に切り出す場面を、会話の形で示します。
🗣️相手「お盆のお坊さん、今年もお願いするんでしょう?」
🙂自分「お母さん、そのことで相談があるの。毎年のお布施が、うちの家計だとだんだん厳しくなってきていて。」
🗣️相手「でも、ご先祖様に申し訳ないじゃない。」
🙂自分「その気持ちは私も同じ。だから、今年はお墓参りにみんなで行って、お仏壇には私がお線香をあげようと思っているの。お寺さんには私からきちんと連絡するね。」
💬 例文
「お母さん、毎年ありがたい行事だと思っているよ。ただ、今年はお布施の負担が重くて、棚経は見送りたいと考えているの。その代わり、お盆にはお墓参りに行って、お仏壇にも家族みんなでお線香をあげたい。お寺さんへの連絡は私からするから、任せてもらえないかな。」
こうした親には、感謝と「代わりにやること」を先に言うタイプの伝え方が向いています。反対に、話し合いが得意な兄弟や、合理的に考える配偶者には、負担の中身を数字で示すほうが伝わりやすいでしょう。
断ったあとも関係を良好に保つポイント
お墓の管理や法事の依頼など、お寺との付き合いは棚経を断ったあとも続きます。お墓参りの折に本堂で一言挨拶するだけでも、関係はつながります。
連絡は、日程が分かった時点ですぐに入れるのが基本です。理由は短くまとめ、これまでの感謝と、来年以降の意向を一言添えておくと、お寺側も予定が立てやすくなります。
相手のタイプ別に整理すると、日頃から親しい住職や寺庭婦人には電話、LINEでやりとりしている副住職や担当者にはLINE、高齢の住職や今後の辞退を伝えたいときは手紙、という使い分けがしやすくなります。
お盆以外の法要への出欠に迷うときは、法事・法要を断る丁寧な言い方も参考になります。
よくある質問
来年はまたお願いしたい場合、どう伝えればいい?
断るときに「来年はまたご相談させてください」と一言添えておけば、今年限りの事情であることが伝わります。翌年は、お盆の1か月前ごろに、前年のお礼を添えてこちらから先に連絡すると、スムーズに再開できます。
兄弟や親族の間で意見が分かれる場合は?
施主か取りまとめ役が代表してお寺に連絡し、経緯はあとから家族に共有するのが、トラブルを避けやすい進め方です。ただし、辞退するにしても続けるにしても、連絡する前に、家族で意見をすり合わせておきましょう。
毎年断りたい、今後はやめたい場合はどう伝える?
今後は依頼自体を控えたいときは、遠回しな言い方を避け、「今後のお参りは辞退させていただきたい」とはっきり伝えたうえで、これまでの感謝を述べます。あいまいな返事を続けると、毎年お寺から確認の連絡が来て、そのたびに断る負担が残ってしまいます。
新盆(初盆)でも断ってよい?
新盆は、故人が初めて帰ってくる特別なお盆として、大切にする家庭やお寺が多い法要です。断ってはいけないわけではありませんが、辞退よりも、日程の変更や読経の簡略化を相談するほうが、親族の理解も得やすくなります。
まとめ:お盆の断りは、早め・短く・感謝を添えて
お盆にお坊さんが家に来ることを断るのは、決して失礼なことではありません。大切なのは、連絡のタイミングと、理由の伝え方、そして感謝の気持ちです。
今年だけの事情か、今後の見直しかを家族で決めて、相手に合った手段で早めに伝えれば、お寺との関係が大きく崩れることはありません。
まずは、お寺から連絡が来る前に、カレンダーへ「お寺に連絡する日」を1つ書き込んでみてください。この記事の例文から自分の状況に近いものを1つ選び、名前と日付だけ書き換えれば、準備はもう半分終わっています。
